これって本当?〜どんなものにも芸風を

アメリカのボストンからの帰り道、ファーストクラスに乗りました。初めてのFクラス搭乗で、少々盛り上がりました。もっとも、ここでファーストクラス搭乗記を書くわけではありません。

機内で「オリエント急行殺人事件」を観ました。ケネス・ブラナー版ですね。かっこいいポワロ。トルコ・イスタンブールからフランス・カレーまでの豪華絢爛な列車の旅。眠る時の格好(パジャマかな)、その上に羽織るガウン。食事時のための正装。何種類も服を持っていかなくてはならない。舞台になっているのは一等車ですからね。
これだけ有名な作品ですが、原作を読んだことは無い上に、1974 年公開のシドニー・ルメット版も観ていない。結末を知らなかったので、かなり楽しめました。

なにせ復路だけでも13時間近く。結局、往復で5本も映画を堪能しました。昔の三本立ての二番館みたい。でもそう考えると、もっとサービスがいい。フルコースの食事(食べながら寝てもいい。まるでローマ時代の食事ですね!?)と飲み物付き。それもクリュッグ
サービスと言えば、ボックスのようになった席には、機内用のパジャマが置いてあります。(ちなみに、ご存知だと思いますが、レンタルではありません。専用。)でも着替えませんでした。これは習慣。僕は、とても心配性なので、離陸着陸時には必ず靴を履いています。そして、ビジネスクラスでも絶対に着のみ着たまま。だって、万が一の時、パジャマでは逃げられないでしょう。 

 

ちょっと前ですが、ロボットが服を着たらどうなるのか、についてリポートした記事がNHKのサイトにありました。
NHK NEWS WEB 「裸」だったロボット 服を着せたなら…| https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_0220.html
NHKの記事はすぐに消えますのでご注意。)
お店に立っているロボットのペッパーくんに服を着せると、接客に「より活躍する」というデータがあるようです。これは所謂、不気味の谷問題の派生というか応用問題なのでしょうか。
こんな話があります。日本の実写特撮ヒーローものをアメリカに輸出した際、そのヒット度合いに明確な差が出たのが、仮面ライダー系とウルトラマン系だとのこと。仮面ライダーは服を着ている(ベルトをしているのに裸だったら、単なる変質者ですね)が、ウルトラマンは裸なのか、わからない。だからアメリカではヒットしなかったと言われています。まあ、ウルトラマン系はアニメになって、そこそこヒットしたようなので、どうやら肌というか表皮というか、その質感に起因するのかなとも思います。

NHKの記事には、服を着ることによって社会的な役割を担うようになる、とありました。日本では一般的に、目立たない普通と言われる服を着ているほうがよいとされているように思うのですが、それは目立たないスーツ(高価過ぎずに、ね)や制服を着ることで、社会(の一階層)に溶け込む、ということ?だいたい、この場合、服とは、なんなんでしょう。割と個性的と言われるカッコで歩いている僕は、結構な割合で、同年代の男性(=おじさん)から不審者を見るような眼差しでジロジロ見られることが多いのですが。

ボストン滞在中にピョンチャン五輪の閉会式がありました。時差を確認すると、現地時間=日本時間の夜8時からのライブ。ということはボストン時間朝5時。帰国準備もあったので、目覚めました。アメリカでオリンピックを放送するのはNBCです。

NBCは超高額の放送権料を支払っています。開会式と女子フィギュア決勝の開始時間をアメリカ東部時間の視聴者に合わせてもらえるほどの金額です。閉会式はどうなっているのかと思って、テレビを着けたら、おかしな事にやってない。NBCのサイトを調べたら、なんとアプリとサイトでライブをやっているものの、テレビでは夜8時から放送だけ。強気でした、NBCは。インターネットである程度安定的なライブを届けるられるようになった時代に合わせた編成は、まだまだ出来ない日本です。慧眼の知己の言葉ですが、「日本のテレビ業界は憧れの同時再送信が出来るようになったら、その先のことを考えてなかった」。今や意外と大量のお金が流れ込んできているネットテレビの世界には、ルール無用を売り物にして先行者たちがいます。今のところ、地上波のような規制がないからかもしれません。でもこのままだと、ネットテレビは新手の大政翼賛会の根城になってしまうような、悪い予感がします。そんな中、NHKも民放も、それぞれのスタイルを持って、ネットテレビの世界で戦わないと。

ところで、また最近見ちゃったんですよ、お金が貯まる人は長財布を使っている、とか言ってる嘘記事「年収1000万円超の人が持つ財布の3つの特徴」。長財布を使う理由が、お金が気持ちの良い状態で滞在してもらうことができるからだって。馬ッ鹿じゃないの。マネーコンサルタントという肩書きの人の記事で、東洋経済オンラインにありました。こんなヨタ記事。日本のスタイルに関する記事って、こんなものかと毎度悲しくなりました。

一方で、何かと話題の文春オンライン。その中で拝読している、一橋大学楠木建教授のブログには共感しました。

楠木建の読書遍歴と「芸論」への偏愛」 http://bunshun.jp/articles/-/6430

 読書論から始まり、作家・小林信彦さんの芸論への愛を語っていらっしゃいます。芸論という言葉、僕には芸談という言葉がしっくりきますね。若い頃の永六輔さんの芸談本は素敵です。また聞き書きというか、採録のうまさは伊丹十三さんも、このお二人に伍するレベルかと。

楠木教授がギリシア人のコラムニスト、タキ・テオドラコプロスの「ハイ・ライフ」から「スタイルとは何か」という文章を引用しています。(いい本ですが、文庫版の中古のみ入手可能です。この本に集録されている文章は、コラムとしてアメリカのカルチャー・ライフスタイル関連雑誌に掲載されていたもの。この手の雑誌って、今の日本では人気無いですもんね。もったいない。僕は「ジェットセッター」という言葉をこの本で初めて知りました。)

「彼(筆者注:タキ)の本から直接引用すると、「だれも知らない。が、見ればそれとわかるのがスタイルだ」「抽象的な性格のもので、持っている人は持っているし、持っていない人は持っていない」「見せかけの反対」「深みのある人格が知らず識らずのうちににじみ出て、なにもしなくてもいつの間にかまわりの人間の関心を集めている」「本物たらんと意識的に努力しなくても本物たりえている人間は、だれでもスタイルを持っている」のである。」

そして楠木さんは「スタイルとは要するに芸風だ」と、うまいことをおっしゃる。

2018年版のケネス・ブラナー扮するポワロのヒゲは、逆ガル翼の如く、ピンと逆立っておりました。格闘も拒まないポワロの姿勢かと。ペッパーくんも芸風を探してるところなのかな。頑張れ!アトムは上半身裸だったよ。芸風を出そうじゃありませんか、皆さん。