これって本当?〜「社長に相応しくない人の条件」

会社経営って、トンデモ理論でなんとかなる世界なのでしょうか。一見、科学的、論理的、理性的に見えて、実はトンデモな主張が、会社経営の世界には結構見られます。ここ数年で、僕がすごいと思った会社経営トンデモ理論は「ソニーの社長は理系でなくては務まらない」かな。小さい話では「インターネットがわかるのは若い人だけ」かな。言っておきますが、僕はソニーの出身者ではありません。悪しからず。

日本社会が停滞しているせいか、新たな出口を見つけるために、どうやら「サイエンス的」に数値に現れるものが正しいという“憧れ”が蔓延しています。「言語化できる」とか「再現できる」などの理系というか科学実験的概念がキーワードです。言い換えると「言語化して引き継げる=誰でも再現できる=属人的ではない=知識を平準化できる」みたいな会社内用語に変わります。これらの言葉が多用される会社は、「コンプライアンス」という言葉が「上司の考えを忖度」という態度に変換される会社です。

「若い人がデジタルがわかる」ということを、エラい人が言っていたら、その会社は遅かれ早かれ、滅びます。決定する立場の人が、自分がわからない、自信がないから、「わかる」若い人に任せという判断をしたという自分に酔っているだけです。また僕の経験上、こういうエラい人は、会議でやたらと「情報が足りない」、「これだけでは決められない」と言って、決定を先延ばしします。この程度の判断、AIに代行させたほうがマシです。だいたい、デジタルネイティブという層があると本当に信じているのでしょうか。「デジタルネイティヴ(という層が存在する【筆者註】)という仮定は幻であるという研究結果(The myths of the digital native and the multitasker :Teaching and Teacher Education, Volume 67, October 2017, Pages 135-142)のサマリー」なんて記事、ありましたよ。

ソニーのトップの話も一緒のような気がします。たいして論理的ではないのですな。感情的な話。ソニーって「SONYのトップは理系でないと務まらない」と主張する人たち、特にOBたちがそんな意見を本にしたり、発表したりする不思議な文化を持つ会社ですよね。でも、「SONYが2017年度第1四半期で過去最高の営業益」なんてニュースが出ると、そんなOBたちは口を閉ざしてしまいます。現金な人たちだ。6代目社長の出井伸之さんが理系でなく、初の文系のサラリーマン社長だったため、それ以降ハワード・ストリンガーさん、そして平井一夫さんが受け継ぐ「AV/IT路線」を否定し、会社の業績の悪化と絡めて、俺の愛するソニーをダメにしやがって、と文句を言い続けるなんて。出井さんがソニーをダメにした張本人だとという戦犯説は根深く残っています。

海外勤務者(=お金にルーズ)と非エンジニア系(=技術や製造に明るくない)は、電気メーカーのトップにはふさわしくない。相次ぐ、日本の大手企業(ソニー東芝)の凋落の原因に、社長に相応しくない人を、時代の空気に流されて選んだからだという人がいます。
でも根本的な原因が他にあるような気がします。

東芝の悲劇

東芝の悲劇

 

 
最近読んだ保阪正康さんの「帝国軍人の弁明:エリート軍人の自伝・回想録を読む」(筑摩選書)。書中に、保坂さんが考えた日本の軍事組織の5大欠点(もしくは弱点)が列挙されておりました。これを読ませていただいた時、はたと膝を打ちましたね。詳しくは、是非、本書を手にお取り頂きたいのですが、以下の2点は特に感じ入った点です。
1)主観的願望を客感的事実にすりかえる。
(=ウチの会社はスゴイ。または俺はエラい。)
2) 知識の獲得が偏頗で人文科学に無知である。(=要するに教養がない)
これに当てはまる人いませんか、あなたの会社のエラい人の中で。