究極の正方形ーIMAXで楽しもう

フランスの港町、ダンケルクDunkirk)。第二次大戦中の1940年、連合国軍のおよそ35万の兵士がドイツ軍に追い詰められたフランスの港町です。彼らは目の前のドーバー海峡を渡るイギリス本土への撤退の時を待っていました。ドイツ軍は怒涛のような攻勢、そう疾風怒涛の勢いをまだ保ったまま、敗北の思いに打ちひしがれた35万人に襲いかかります。
この戦い、この状況をテーマにした映画、その名も「ダンケルク(Dankirk)」がこの秋に公開されます。監督はクリストファー・ノーラン。彼の作品、バットマンダークナイト」(2005年・2008年・2012年)トリロジー、「インセプション」(2010年)、「インターステラー」(2014年)は僕が何度も観ても飽きない映画です。
ちなみに、もう1本「プレステージ(The Prestige)」(2006年)も、リストに加えています。クリスチャン・ベールヒュー・ジャックマン扮する2人のマジシャンが過去の因縁によって、互いに競い合う物語。何が良いってニコラ・テスラが出てきます。それもデヴィッド・ボウイが、テスラ役なのです。いいでしょう、すごいでしょう(僕だけですかね、そう思うのは)。

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さて「ダンケルク」。映画としての期待もさることながら、技術的にも話題の作品です。ほとんどのショットがIMAX70ミリフィルムで撮影されているからです。クリストファー・ノーラン監督はIMAXを愛してやまない監督として知られていますが、今回は「今までに人がやったことのないことをやってる」と言っているくらい、彼がIMAXで撮りまくった映画なのです。
これを記念して(?)、品川のTジョイプリンス品川で、 IMAX 上映によるクリストファー・ノーラン祭(なんで興行界には、この“祭”という言葉が残っているのでしょうかね。あとはネット内ですかね)が行われていたので、「インセプション」と「インターステラー」のIMAX版を観てきました。

IMAXとは何かについては、単純に言うと「通常の映画で使用されるフィルムよりも大きなサイズの映像を記録、上映する」仕組みです。通常の映画は35ミリフィルムを使います。そしてフィルムが縦に走ります。IMAXは基本的には70ミリフィルムを使い、さらにそれを横に走らせます。結果として、高精細の映像が得られます。解像度も高く、8Kから12Kあると言われています。劇場で上映されるサイズで言うと、スタンダード(STANDARD)と呼ばれる通常のスクリーンサイズは、だいたい2.4対1。それに対して、IMAXデジタルは 1.9 対1、さらにIMAXフィルムの場合は、1.43対1と正方形に近い形になります。よって、IMAXフィルムで撮影された映画を通常のスクリーンで見る場合、上下最大40%以上の映像がカットされていることになります。

 

世界最大のIMAXスクリーンはオーストラリア、シドニーのLG IMAX Theater Sydneyのものが最大です。ただ、そのシアターは現在、リニューアル中。2018年には、世界最大の記録を塗り替える大きさで、公開されるということです。2016年時点でのスクリーンの大きさは、横35.73m×縦23.16mということです。
日本では1996年に新宿(住所は渋谷区ですが)の高島屋タイムズスクエアに出来たのが最初のIMAXシアターです。あるのは知っていたのですが、残念ながら行ったことがありませんでした。現在、首都圏で一番、スクリーンが大きいのは千葉県成田市のHUMAXシネマズで、スクリーンの大きさは横24.5m×縦14mとのことです。スクリーンサイズが大きいことの利点は、なんでしょうか。


僕のIMAX初体験はアメリカのサンノゼでした。ここで観たIMAX映像は、没入感という言葉を思い起こさせます。ダウンタウンのテックミュージアム(The Teck Musium)にあるドーム型スクリーン。その映像体験が、スクリーンの大きさの意味を教えてくれました。

博物館ということもあり、展示の一環として上映室が見えるようになっています。上映作品はだいたい1時間以内のものなのですが、直径1.5メートル以上のロールになっている長大な70ミリフィルムが、横に走るところが見られます。ここのスクリーンの大きさの数値的なデータが見つからないのですが、“8階建てのビルの高さ”と言われています。この大きさですと、視界の全てが映像となり、例えば、映像の中で人が画面の右側で動くと、実際に自分の右側で何かが動いたように感じて、つい首を右側に動かしてしまいそうになります。そう、画面の大きさ故の立体感を感じます。サンノゼに行く機会があると、時間を見つけて何度か訪れています。



品川は初めて訪れました。残念ながらフィルム上映ではありません。スクリーンは都内最大クラス(数値的には不明です)。品川プリンスホテルの迷宮の中にあります。どこにどう繋がっているのか、さっぱりわからない。
インターステラー」は映画館だけではなく、 DVD、さらには条件の悪い飛行機内の上映でも観て、だいたいのシーンを覚えていたつもりでしたが、IMAX版で観ると確かに全く別物。こんなカットあったっけ、という感じで観ることができました。あらためて、「インターステラー」の公開時、シドニーにフィルムIMAX版を見に行った人が羨ましい限りです。

クリストファー・ノーラン監督と言えば、音楽はハンス・ジマーIMAXの爆音が似合う作曲家です。彼の音楽で日本人が一番耳馴染みがあるのが、「料理の鉄人」(1993〜1999年:フジテレビ)のテーマ。ではなく、「バックドラフト(Backdraft)」(1991年)のメインテーマでしょう。他には「パイレーツ・オブ・カリビアン」(2003年〜)や「グラディエーター」(2000年)、そしてトム・クルーズ渡辺謙の共演で知られる「ラスト・サムライ」(2003年)などでも知られています。

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ご存知でしょうか、テレビ放送やラジオ放送で、番組制作の際に、番組の音楽効果の素材(BGM等)を市販の音楽CDから選んで、その一部を(著作権者の同意無く)使っているのは日本の放送界だけ(と言っていいと思います)の慣習です。一応、全くの無料という訳ではなく、事後に使った音源とその長さを報告することにより、関連著作権保持者(社)にJASRAC等から報酬が支払われます。昔はテレビとラジオだけだったのですが、今ではインターネット配信もあるので、著作権の処理の手間を考えると、オリジナルの音楽を使ったほうが安いというのが昨今の大人の事情です。日本以外の国では、著作権フリーの曲を使うのが一般的です。1曲の音楽には、実は恐ろしく沢山の人が関わっていますから。アメリカでの日本語テレビ放送で「料理の鉄人」を偶然見たハンス・ジマー本人が、これは俺の曲じゃん、と言って驚いたという噂もあります。

日本という国はサンプリングが元々、得意だったのかしら。古来から「本歌取(ほんかどり)」という、和歌の技法があります。この言葉、広い解釈では、名作をモチーフにして取り入れ、自分の作品を豊かにするというように捉えられています。リスペクトしている作品の良いところをもらって、自分の作品に奥行きを与える。これって、古い音楽の有名なバックトラックだけ引用(=抜く)とか、今の時代の技術ではどんなことでも可能です。もっとも、行き過ぎた「本歌取」は「盗古歌」(古い歌を取る)であるとされ、平安時代でも批判的な意見があったようです(Wikipediaによる)。盗作かリスペクトによる本歌取りか、その線引は難しいのは昔から変わりません。

ハンス・ジマーの曲はどれも似ているという意見と、何かに似ているという意見もありますが、僕は大好きです。少なくとも映像に相応しい音楽です。映像に加えて、音による没入感の高まりがあります。彼のライブ、映画音楽作品をオーケストラ+バンド編成で演奏される「インセプション」、「インターステラー」、そして「ダークナイト」トリロジーの生演奏を聴いてみたいと思います。

さて、IMAXによる映像体験のお話を書いて来ましたが、一方でスマートフォンで映像を見ることも一般的です。あなたはご自分のスマホを横にして見てますか?それとも、縦のまま?そう、元の映像がフィルム版のIMAXなら画面比率は1.43対1。ほぼ正方形です。既に、正方形の映像を見せるというコンテンツも出てきています。究極の画質で作られたフィルム版IMAXの映像を、画質を適合させた上で、スマホでの縦視聴用に提供したらいかがでしょう。スマホで見る新しい映像体験になるかもしれません。

アメリカの放送局ABCは、マーベルの世界観シリーズの一つ「Inhumans」を全8話のシリーズでテレビドラマ化する、とのことなのですが、なんとこれは全編IMAXカメラで撮影しているらしいのです。IMAXデジタルだと思いますが、既に公開されているトレーラーでもそう謳っています。テレビで放送するのにIMAX!?最初の2話は9月にIMAX作品として劇場公開されるということも発表されています。もしかして、インターネット配信の際は、スマホを縦に持って見る作品になるかもしれませんね。

映画が白黒からカラー、スタンダード、70ミリ、120ミリと進化しました。テレビも白黒、カラー、HD、4K、8Kと進化しました(3Dは進化の脇道かな?)。少なくとも今のところ、フィルム版IMAXが映像の究極の一形態を体験させてくれることは間違いありません。

さて、この秋、「ダンケルク」を70ミリフィルムIMAXで観るために、どこへ旅をしたらいいのか。一思案です。