永遠の夏への扉はどこに〜ホームスピーカーがAIを供にやってくる

毎週日曜日、午後2時、FM東京の「山下達郎のサンデー・ソングブック」を聴くのが日課になっています。もっとも、生では結構聞き逃すことが多くて、radikoのタイムフリーを使わせてもらっています。便利。

6月18日放送回の1曲目は僕にとっては感涙の1曲、「夏への扉」。それもライブで、キーボード難波弘之さん、ベース伊藤広規さんというメンバーでの演奏。さらに、2番を難波弘之さんが歌っているという超ベストパフォーマンス。この曲、放送でも山下さんが言っていましたが、SFファンでプログレファンのキーボード奏者、難波弘之さんの1979年のソロ・アルバム「センス・オブ・ワンダー」への書き下ろし。難波弘之さんは高校時代からの憧れのキーボーディスト。彼の処女作、「飛行船の上のシンセサイザー弾き」も2冊、文化出版局版と早川書房ハヤカワ文庫版、持ってます。「SFマガジン」の連載、「キーボードマガジン」の連載、どちらも読ませていただきました。そしてNHK教育テレビの「ベストサウンド」は必ず録画(VHSで!)して見ていました。

夏への扉」は、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインが1956年に発表したタイムトラベルをテーマにした小説「The Door Into Summer」をモチーフにした曲です。この小説は、未来からの過去の改変、タイムトラベルの結果による過去からの未来の改変について、考察しています。このテーマで思い出すのは、1965年に発表された広瀬正の「マイナス・ゼロ」も過去の改変がテーマ。僕が若い頃でも、あまり手に入らない本でしたが、集英社文庫広瀬正小説全集で揃えました。それが、今やKindle版で買えるなんて、素敵な時代。SFはサイエンス・フィクションの略だけではなく、スペキュレイティブ・フィクションでもあるという議論が懐かしい。

 

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 

毎度毎度の長い前振りですが、ラジオを聞きながら何かをするという行為。デジタルラジオになってから、40年前の習慣が戻って来ているのが驚きです。電車の中で、デジタルラジオ(それも聞き逃し!)でお気に入りの番組を聞きながら、デジタルブックで週刊誌を読む。これが習慣になっています。デジタルラジオになって、再確認したことは「ながら族」という死語は、実はまだ生きているということ。僕が若い頃、ラジオやレコードを聞ききながら勉強や仕事をする人を呼んでいた言葉ですが、スマートフォン時代になって、それを支える新しいサービスが登場し、新たな「ながら族」の仕様が出来上がったと言ってもいいでしょう。そして、この新「ながら族」はデジタルコンテンツの覇権争いに大きな意味を持ちます。

車を運転する時を考えてください。車を運転する作業だけで一杯一杯になっているドライバーは危なくってしょうがない。慣れているドライバーは、運転行為が無意識の中に組み込まれているというか、考えなくても、体が先に動くようになっていますよね。運転が専一になっていなっていうこと。ラジオを聴きながら、同乗者いれば会話しながら運転するのは当たり前。

アマゾンのサービスでAudibleというのがあります。本を読んでくれるサービスとでもいうのでしょうか。本を音声の朗読として買うわけです。また、たまにアメリカのアマゾンで書籍を買う場合に、CDという選択肢があって、面食らいます。運転しながら再生するみたいな使い方。日本人には慣れがない、本の読み方です。Audibleは、その派生系ですね。

昔の日本のラジオには、朗読の時間というのが結構あって、かの有名なNHKアナウンサー鈴木健二さんの時代小説の朗読なんて、最高でした。(今でもNHKラジオ深夜便では、朗読の時間があるようです。)

耳から入る情報は、何かをしていても、流れの中に棹差すようにしっかり刺さります。そしてこれからは、何かをしている時に、声が割り込むようになります。

テレビとスマートフォンのスクリーンを見る時間の取り合いと言われてきましたが、実は見る方にとっては、ほとんどの時間は「ながら見」なので、実はタイムシェアリングの問題。そしてコンテンツの質の問題です。電波で送られてくるテレビを見なくなっても、その他の映像コンテンツはむしろ、視聴時間が増えている。そんな時、何かを見ている時は、声をかけるしかないでしょう。

ちなみにデジタルラジオはラジオの復権と言っている方もいますが、それはやや見当違い。情報の上乗せは音声が一番、生理的な解決方法であるということが、改めてわかったということでしょう。テレビを見ている時にも、何かが音声で割り込んできたら、どうでしょう。たとえば、長時間の歌番組。ちょっと浮気して裏番組を見ている時、もともと見ていた番組に自分のお気に入りの出演者が登場することを教えてくれたら?

ちょっと逸れますが、耳にイヤフォンが入っているのは、いろいろな感覚が奪われているように感じます。人が近くに寄って来てもわからない。または、どの方向から近づいて来るのかわからない。距離感が鈍るというのでしょうか。だから、オープンエアーの状態で音声が来るのがいい。

テレビドラマを見ていると、いろいろ考えさせられます。TBS系日曜劇場枠「小さな巨人」、ちょうど最終回でした。怒鳴り合い、顔を変形させる闘いの最終回でもありました。香川照之さんがあの顔で「捜査第一課長、小野田義信の目を見て言え!昆虫が好きだと!」と言いそうでドキドキしました。サラリーマンにとって、重い言葉がたくさん登場していました。「辞めない覚悟もある」、「敵は味方のふりをする」などなど、身に染みました。でに画面に集中した後、コマーシャルに入って、ふと息を抜いて、何かを考えては、iPhoneで調べる、メモする。そんなテレビの見方。製作者には申し訳ないのですが、そんなテレビの見方は、既に普通の行為です。これからは、テレビを見ながら、ホームスピーカーに呼びかける。そして、次の時代は、ホームスピーカーが音声で、何かを知らせてくれる。

【早期購入特典あり】小さな巨人 DVD-BOX(オリジナル 3色フリクションボールペン付)
 

 

アマゾンのAlexa(Echo)、グーグルのGoogle Home、LINEのWAVE(Clova)、そしてAppleのHome Pod。日本語対応は、どうやら今年の年末12月から春先までに、LINEを除く各社のタイミングがやって来そうですから、揃い踏みのタイミングは2018年の春でしょう。戦闘開始。

前述の「夏への扉」は、1956年から見た未来、1970年がスタート点です。そこにはHired Girlという家事ロボットが一般的に使われている時代になっています。翻訳したS-Fマガジン初代編集長福島正実さんも苦労されたのでしょう。文化女中器という訳になっています。(新訳ではどのようになっているのか未確認です。)ルンバではありませんが、掃除を含めた家事一般をこなしてくれるロボットが1970年の世界では、当たり前になっています。そして、主人公が冷凍睡眠(コールド・スリープ)の末に目覚める2000年には、さらに便利になった万能フランク(Flexible Frank)というロボットが存在しているという設定でした。2017年の今、AIホームスピーカーは、Hired Girl、そしてFlexible Frankを超える存在になれるのでしょうか。

永遠の夏への憧れは尽きません。さて、夏が来ます。今年の夏は暑いのでしょうか。