映画の音〜仲代さんの音

 

 

テレビをザッピングしていると、思わぬシーンに遭遇します。今回はそんなお話。

子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎」(1974年公開)をWOWOWでチョイ見しました。深夜のザッピングの途中でしたが、あまりの展開に釘付けになりました。
雪の斜面で、橇となった大五郎の乳母車に乗った若山富三郎の拝一刀が猛スピードで滑降しながら、これまたスキーで滑降しながら襲いかかる柳生軍団と闘う、映画のクライマックス。立木を背にして、集団攻撃を受ける拝一刀の前に柳生の手練れが5~6人一列に並び、1人の様に振る舞いながら、2人目が前の1人目を飛び越えて、拝一刀に襲いかかる様は、まるでZOO(雪の斜面ですから、EXILEではなく、ZOOでしょう)の名曲「Choo Choo Train」の隊列で、「機動戦士ガンダム」第24話(1979年9月15日放送「追撃!トリプル・ドム」)に登場するモビルスーツパイロットチーム、黒い三連星が使用した攻撃フォーメーション『ジェットストリームアタック」を仕掛けているではありませんか。これは縦一列に並び、正面から見ると1人だけが向かってきているように見える態勢。拝一刀は、もちろんアムロ・レイのようにビームサーベルではなく、愛刀の胴太貫で見事、全員ぶった斬ります。そうだ!この「子連れ狼」シリーズ放送事前特番で日本の映画史、時代劇研究家の春日太一さんと映画評論家の町山智浩さんが、対談で言っていたのはこれか!と。確かに「ジェットストリームアタック」ですが、僕はそこに「Choo Choo Train」を加えたいと思います。それもZOO版。

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この雪のシーン、撮影の関係でしょうか、同じカットを編集で多用しています。そこに人をぶった斬る音も含めて、ずっと「どわー」「ごわー」「ずわー」という様な音響効果が付いています。

映画はちょっと前まで、ほとんど全てがアフレコでした。基本的に編集が前提のため、また撮影するカメラのフィルムが回る音が大きかったこともあり、お芝居と台詞を一緒に収録出来なかったので、お芝居を撮って、その際に役者さんの台詞とそのニュアンスを記録し(映画スタッフの中の「記録」というお仕事の業務の一つです)、映像の編集が終わってから、当然ながら同じ俳優さんが自分の芝居に合わせて、台詞を言います。そして、そこに情景に合う音を付けます。音を足すのではありません。現場の音はほぼ全く使えません。全ての音を「付ける」のです。

 

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アフレコって、難しそうですよね。伊丹十三監督作品「マルタイの女」(1997年公開)。三谷幸喜さんが脚本に参加していて、最終的には企画協力で名前を連ねています。そのせいか、三谷さん縁の俳優さんが多数出演しています。準主役の立花刑事役の西村雅彦さんがアフレコが苦手だというのが、DVDからもわかります。リップシンクがなんか微妙。伊丹さんが諦めたとは思えないから、かなり追い込んだのでしょう。そう思うと、津川雅彦さんや宮本信子さんはやっぱり上手い。映画全体もすごく整音されていて、手塚治虫先生の漫画じゃないけど「シーン」という静寂の音(?)も付けられているように感じます。伊丹さんの映画は、この「マルタイの女」が遺作となりました。残念です。

 

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最近、黒澤明監督の「乱」(1985年公開)の4Kデジタル修復版を見ました。公開から30年経っての修復版ということですが、公開当時に劇場で見た記憶と比べても、あまりその効果は感じられませんでした。Wikipediaにもある有名なエピソードですが、畠山小彌太役の加藤武さん(市川崑監督、石坂浩二さん金田一耕助シリーズの警察幹部役で「よしっ!わかった!」という台詞、ご存じじゃありませんか?)が撮影中に落馬して骨折し、アフレコが出来なくなってしまったので、親戚である声優の加藤精三さんがアフレコしています。星一徹です。結構、いいですよ。不思議なもので、気にして見ていたら、ちょっとだけ違和感(というと失礼ですね。)がありましたが。

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カメラもデジタル化されたり、録音技術も高度化してきたこともあり、この音の世界も変わってきています。中でも「レ・ミゼラブル」(2012年公開)の歌(全編ほとんど歌なので、台詞と同じことになりますね)は、同録だということでかなり話題になりました。実はかなり、画期的なミュージカル映画なのです。というのもミュージカル映画は先に歌を録音して、それに合わせて口パク(歌っているようにお芝居すること)するという方法で制作されてきました。でもこの映画では、俳優が現場で歌っている音声をお芝居と一緒に映像に収めています。本当に歌っているのです。

ミュージカルと言えば「La La Land(ラ・ラ・ランド)」。日本でもリピーター続出の大ヒットの様です。iTunesではサントラが売れているそうです。僕も買いました。アメリカではアナログ版も売れているとのこと。この映画の収録は口パク方式でしょう。音楽を担当した作曲家ジャスティン・ハーウィッツさんは監督デミアン・チャゼルさんとハーバード大学同級生。音楽作りはかなり上手です。アレンジにフルートが結構使われています。フルートって、古くさいアレンジになります。人の声に近い音域なので、歌の周りに纏わり付いて、うるさい感じになるのですが、逆にそれがちょっと古い感じというか、伝統的なミュージカルの音楽の感じを出しています。タイトルチューン「Another Day of Sun」の46秒あたりからの4小節が「藤田ニコル・つまんねぇ・ホットバス(hot bath)・平井堅」と聞こえます。空耳。結構気に入ってます。
俳優、ご存じ仲代達矢さんが「ロサンゼルス(LA)では、たくさんの俳優や歌手の卵たちが、ウエイター(waiter)をしながら、その日が来るのを待ってる(=ウエイト:wait)んだよ」と言ったと、無名塾の弟子である滝藤賢一さんがGOETEの連載に書いてました。さすがいいコト仰る。

 

ラ・ラ・ランド-オリジナル・サウンドトラック

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ラ・ラ・ランド-オリジナル・サウンドトラック(スコア)

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最近気づいたのですが、映画での仲代達矢さんの音。声ではありませんよ。仲代さんが発する音って、独特ですよね。ところで、仲代さん、Twitterを始められたそうです。一度、原稿用紙に書いて、それをスタッフさんが入力しているんですって。
そうそう、仲代さんの音。ちょっと前にこれまたWOWOWで、テレビ出身の映画監督としての先駆け、五社英雄監督特集をやっていました。「御用金」(1979年公開)と「雲霧仁左衛門」(1978年公開)を見ました。どちらの劇中も、主役の仲代達矢さんが人を斬る時の声がなんとも言えず凄い。「どぅ」というか、濁音+息みたいな音を出しながら、人をぶった斬ります。盗賊である主役の仁左衛門を務めた「雲霧仁左衛門」の1シーン、火付盗賊改の中でも一番の居合いの使い手である同心(室田日出男さん)との対決シーン。彼が駕籠に乗っている時に田んぼのあぜ道、それも一本道で、駕籠ごとぶった斬ります(駕籠を正面から上と下に!)。乗っていた同心の首があぜ道にゴロリと、思いきや、同心は事前に雲霧の襲撃を察して、駕籠かきに紛れていたのです。仁左衛門は、同心を田んぼの泥濘に誘いこんで、居合いの踏み込みを封じて、突き殺します。このシーンの、仲代さんの息遣いともなんとも言えない声。しかしアフレコかな、どうやって合わせたんだろう。さすが。仲代さんの音です。

 

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でも、動きの芝居だけでもスゴいんです。肉をタレに揉み込み、(おそらく)七輪で焼き、口に頬ばるまでを、無言で動作だけで見せる1998年のCM。つまり“エア”焼き肉なのですが、弟子たちがまるで本当に食べているように見えるので驚愕の声を上げるという、焼き肉のタレのCMです。
音もスゴい、そして音が無くてもスゴい、84歳の仲代さん。これからも、お芝居を見せてください。