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阿房飛行機、万歳!

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仙台に行くために東北新幹線に乗りました。はやぶさ。進行方向左側、西日暮里から田端にかけては、武蔵野台地の東端ですかね。山手線と京浜東北線が走っている向こうの崖の感じが素敵です。NHKのブラタモリじゃないんだから。
乗り物に乗ったら仕事をしようと思うのですが、大概、外を見てしまって、ダメです。子どもの頃は都電が日常の乗り物でした。都電の車掌さんごっこが好きだったと母親に言われました。と、書くといったい、いつの時代に生まれたんだと思われそうですが。
新幹線では、Googleマップをついつい立ち上げて、場所の確認をしてしまいます。自分の現在地を表す点がすごい勢いで移動していくのも楽しい楽しい。乗り物大好きなのです。

乗り鉄」という言葉もやや人口に膾炙してきた感がありますが、列車に乗ることだけを目的とする旅があることを世の中に宣言したのは、大正から昭和にかけて作品を発表した作家であり随筆家であった内田百閒先生でしょう。「阿房列車」という作品の「なんの用事もないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思ふ。」という一文が有名です。(ちなみに、御著書は読んだことはありません。また、百閒先生関連で「まあだだよ」という百閒先生と教え子たちの交流を描いている黒澤明監督の最後の映画は見ましたが、僕にはよくわからない映画でした。)

第一阿房列車 (新潮文庫)

第一阿房列車 (新潮文庫)

 

 

さらに、ラテンミュージシャンで餃子店オーナーシェフ公認サンタクロースパラダイス山元さんのように飛行機に乗ることを目的とする旅を行い、年間1000回を超える搭乗回数をこなしている方もいます。かく言う僕も、飛行機に乗るためだけに旅行することがあります。“阿房飛行機”ですね。

 

ご存じの方も多いと思いますが、飛行機会社はマイレージを貯めることによって、いわゆる特典サービスを提供しています。お客さんの囲い込みのために便宜を図る訳ですが、それを得るためには、飛行機に乗らなければなりません。お金もかかります。マイレージによる無料航空券を目的としている方もいますが、僕は面倒くさいのでマイレージによる航空券、いわゆる特典航空券を使ったことはほぼ皆無です。自分の都合と予約がとれる日程を調整するのが面倒なのです。では何のために貯めるのか。実は貯めることすらも、目的ではないかもしれません。マイレージと同時に累積される会員ステータスのためのポイント、プレミアムポイント(ANA会員)の獲得と会員ステータス維持のためだけに飛行機に乗っているのです。厳しい修行です。いずれにしても、飛行機に乗ることが趣味として確立しているのか、議論を要するところでしょう。


この趣味は、旅の予定を考える際に、病膏肓に入るといった症状を見せることがあります。例えば今回のように東京から仙台に行く場合、仕事が終わって帰路が自由で、その日に予定がないとしましょう。仙台空港に出て、仙台から大阪・伊丹空港または福岡に飛び、伊丹または福岡から東京・羽田へ戻るというルートを考えてしまうのです。バカじゃなかろうか。そこまでして、プレミアムポイントを貯めたいのか、という旅程。まさに“阿房飛行機”。
別にCAさんにモテたいから、CAさんと接触する機会をたくさん持ちたいから乗るのではありません。もちろん嫌いじゃありませんよ。どちらかというと、ウエルカムです。少なくとも僕の経験上、搭乗回数が多いからという理由でCAさんにモテるという人はいないと思うのです。敵も然る者、“阿房飛行機”数奇者であることはバレますから。

さて、記録にあるだけでも地球を26周した程度しか飛行機に乗っていない、まだまだ初心者の僕ですが、たまに事件と言いますか、ちょっとした失敗を犯します。
イギリス・ロンドンから日本への帰途、フランクフルトでの乗り継ぎ便でのことでした。ロンドンの出発が遅れたため、乗り継ぎ時間がギリギリ。搭乗するのは、ルフトハンザ(Lufthansa)のA380。エアバス社製の世界初の総2階建ての大型ジェット機です。2階のビジネスクラスの一番後ろのシートでしたので、最後尾の扉から走り込み、螺旋階段を駆け上がりました。息も絶え絶え。離陸して一安心。しばらくして、ミールサービスが始まりました。その時、早朝にロンドンを経っていたので、強烈な眠気が襲ってきました。なんとかメインを食べ終わり、さてチーズとデザート両方もらうおうかと思案しながら待っていたら、寝落ちしてしまいました。はっと気づいたら、機内は就寝モード。この機体の2階はファーストクラスとビジネスクラスのみ。100席近くもビジネスクラス席があると、なかなかサービスは進まないものです。A380はANAがハワイ路線に導入するようです。ルフトハンザ機では、垂直尾翼に着いたカメラの映像を機内で見られました。ANAの380でも見られるといいですね。雲を掻き分ける感じが素敵です。

ちなみに、機内食と言えば、エールフランスビジネスクラスに乗った時、牛肉の赤ワイン煮込み(Boeuf bourguignon)が出ました。やはり旨い。エールフランスワンワールド傘下なので、滅多に乗らないのですが、これはまた食べてみたいと思いました。東京でもフランス大使館のちょっとしたパーティーの際に、この料理をいただいたことがあります。やはり大量にワインが投入されている感があり、とても旨かったことを覚えています。お国料理ですもんね。
極め付けではないのですが、虎屋の羊羹で一悶着あったことがあります。ロンドンからイタリア・トリノへの移動の時、ちょうど前日、ヨーロッパ内の空港でテロがあり、警戒が厳しくなったところでした。ガトウィック空港までの列車も便数が制限され、駅に列車が到着するなり、LCC利用者が爆走して行きます。出国検査の際、厳しい顔の係官が僕の鞄から取り出したのは、虎屋の羊羹「夜の梅」。一時期、外国へのお土産に愛用しておりました。切り口の小豆が夜に咲く梅の花を思わせるなんて、口上を言いながら渡したものです。この時までは。しかし、形状が微妙でした、微妙なタイミングなので。可塑性のある爆薬に似ていると言えば似ています。アメリカ式に言えば、Composition 4というのでしょうか。係官が集まってきて、皆で羊羹をグニグニと揉みしだきます。これは日本の伝統的なお菓子で、豆を甘く煮て固めたものだと説明しました。それならばジャムだと判定され、放棄しないなら、預け荷物に入れろと言われて、検査所を追い出されました。

老舗の流儀 虎屋とエルメス

老舗の流儀 虎屋とエルメス

 

 


その時、厳しい顔つきで、僕の鞄をひっくり返していた係官の一人が、いつも一緒に旅をしている豚の小さいぬいぐるみを見て、不思議そうな顔をしていました。その子豚をつまみ上げながら、僕の顔を見て、ちょっと吹き出しそうでした。
阿房飛行機、まだまだ続きます。