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解脱への道は斯くの如き遠さ

羽田空港国際線ターミナルで、靴、トローリーケース、鞄が全てベルルッティBerluti)という方をお見かけしました。雑誌の広告でしか見ないような揃えかたです。大変失礼ながら、日頃から洋服大好きという感じではないように見えたので、よく覚えています。ベルルッティで全部というのはちょっとシブい。でも、なんというかな、ちょっとダサい。勿論、かなりの収入がないと出来ない出で立ちですが。

一目でどこのブランドかわかる服を着るのは難しいことです。それも全身同じブランドでコーディネートするのは。

先に申し上げておきますが、自分がおしゃれな人間、センスのいい人間だと思ってるわけではありません。時々、妙なカッコしてますよ、僕は。着たいものを好きなように着るのが好きなだけです。毎朝、何を着るのか、靴はどうするのか、悩むことが好きなだけです。何を着るか考えないという人は、他人の服装に何か言うのはやめましょうね。

おしゃれが好きな人々、たまに誰かにおしゃれだね、って言われるのが嬉しい人々の中での、心の小さな争いです。

ルイ・ヴィトン(Loius Vuitton)やグッチ(Gucci)、プラダPrada)といったハイブランドは、カジュアル服分野にかなり力を入れています。鞄などのブランド名を築く基礎になった商品以外の商品を、顧客に買ってもらわないと裾野が広がらないからでしょう。しかし、その結果、全身ルイ・ヴィトン、全身グッチのような人々が街を闊歩するという事態になります。

ルイ・ヴィトンの今のクリエイティブ・ディレクターはニコラ・ジェスキエールという人。モードの世界で忘れられそうになっていたバレンシアガを復活させた人。グッチは2015年からアレッサンドロ・ミケーレ。プラダは ご存知、ミウッチャ・プラダ。そう、デザイナーというより、クリエイティブディレクターなんですよね。

彼女らはどこまでを文字通り、手掛けているのでしょうか。

有名ブランドのクリエイティブ(アーティスティック)ディレクターという仕事は、かなり葛藤が多そうな仕事です。なんでも自由になる訳ではないでしょう。 売れるものも作らないとならない。

2014年公開のドキュメンタリー映画ディオールと私(Dior and I)」。クリスチャン・ディオールのアーティスティックディレクターに就任したラフ・シモンズがオートクチュールのデザイナーとして悩むのです。ラフはどちらかというかメンズのアートっぽいカジュアル服で知られています。2005年からジル・サンダーのメンズおよびレディースのクリエイティブディレクターを務めました。僕が一番印象に残っているのは、ラフが激怒するシーンです。初めてのコレクションの作品を確認する大切なランスルーの日に、メゾンに2人いるお針子のトップの1人が不在だと知って、激怒します。彼女はアメリカの顧客の仮縫いに行ってしまっていたのです。年間5000万使ってくれるお客が、メゾンにとっては大事だからです。ラフのアーティステックな思いとビジネスを両立させるのは難しいということを象徴するシーンだと思います。 (ラフ・シモンズはでディオールを3年間で退任し、2016年3月にカルバンクラインのチーフクリエイティブオフィサーに就任。)

ディオールと私 (通常版) [DVD]

つい最近、俳優のオーランド・ブルームさんが彼女と日本で休暇を過ごした時の写真をInstagramで見ました。GAPのブルーのパーカー姿でした。

秋元康先生と同じ飛行機に乗り合わせたことがあります。ロンドンからの帰国便。当然、秋元康先生はファーストクラスです。成田空港の税関検査で、ルイ・ヴィトンのハードケースを積み上げていらっしゃいました。重いと思いますよ、あれ。でも自分で運ばないからだろうからいいのか。

どこのブランドかわかりやすい服で、全身バラバラに組み合わせているのも難しい。思いっきり(中途半端なではなく、ね)お金を持っている人は、どこの服かはわからないものを着ています。例えば、ブルネロクチネリ (Brunello Cucinelli)」やロロ・ピアーナ(Loro Piana)。どちらもすっごく高い。でも地味なんだよね。僕が精神的にかつ経済的に、その境地に達するには精進が必要です。そうそう、ユーミンが言っていたように記憶しています。『私にとってファッションは宗教だ』。解脱したいなぁ。