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料理批評はオルタナファクトの天下一武闘会

こうなると何が真実なのかは、誰にもわかりません。自分が思ったことだけが真実なのか。いやもしかしたら真実なんてないのかしら。第45代アメリカ合衆国大統領トランプさんの顧問ケリーアン・コンウェイさんが仰った“オルタナファクト (alternative facts)”という言葉。『もう一つの真実』とは何でしょう。僕はすぐさま、「食べログ」を思い出しました。

お店を検索すると必ず「食べログ」の書き込みが検索結果上位に上がってくるので、ついつい読んでしまいます。結果として、お店メモとしてアプリも使っています。でもでも、口コミコメントを読むたんびにイライラするのも(僕にとって)事実です。あんた誰さまなの目線で語られる“オルタナファクト”をすぐに見つけることが出来ます。またそんな書き込みには、間違いが多いこと多いこと。誤字脱字は言うに及ばず、料理法や素材について中途半端な知識の開陳ぶりの甚だしいこと。寿司を握る職人さんを板前さんと呼ぶだけではなく、和食店主はみな大将。女性の店主なら女将と表現。慣用句化しているのは「使えますね〜」と「至高の極み」。偉そうに何に使うの、あなた。「至高」って、あなたの「歯垢」ってこと? (少々汚い表現で失礼しました。)

最近はちょっと流行っている飲食店にアンジャッシュ渡部さんのステッカーが貼ってあります。あれ、なんでしょうね。お店はお客が入ればいいということなんでしょう。それは正しい。でもね、けっこう迷惑なんだよなぁ。だって、変なお客で混むだけなんだもの。渋谷駅近くの牛かつ屋さん。彼が書いたからというわけでもないのでしょうが、見事な行列店になりました。でもその列の先頭に、寂しい注意書きがあります。「お一人一品、ご注文ください」そう、若い人がグループで一皿しか注文しないんだろうな。店は困るよね。

讃岐うどんブームの絶頂期、あるうどん屋さんに張り紙が。「お一人、1杯の注文をお願いします」。有名店巡りのバスツアーのお客さんたちは、何軒も回るから、お腹いっぱいにならないように、グループで1杯しか注文しないんだって。でも安いところだと、1杯100円だよ。それを3〜4 人で食べられたら、お店は商売にならないじゃん。

25年くらい前のことになりますが、昼下がりのあるフランス料理店で、こんな光景に出くわしました。若い男性が1人で入ってきて、その店の名物料理だけを注文していました。フランス料理のコースではメイン料理として注文する料理。お店の方から前菜などをとやんわり他の料理を勧められたら、「ではライス」。フランス料理店なのでライスは無いと言われると、「先輩(だか師匠だか)に、この料理を食べるべきだ。」と言われたので来た、とかなんとか言っているのが聞こえました。「だから、それだけでいい。他はいらない」。お店は親切に、その料理だけ出していたように記憶しています。確かに食べるべき一皿であることは間違いありません。

お店とのつきあい方って、社会との付き合い方じゃないですか。そこに必要なのは、自分が絶対的な物差しにはならないという弁え(わきまえ)。常に自分を疑いましょうよ。

味覚という絶対的な物差しの無いモノを評価するのは難しいです。小林秀雄ぐらい言い切れるならいいですよ。タイトルはイマイチだけど、林修さんの「すし、うなぎ、てんぷら 林修が語る食の美学」でも読みましょう、皆さん。書き込む前に。

食べログを見ながら、今週のオルタナちゃんとでも称して、天上天下唯我独尊のヤツのランキングでも作りたくなる今日この頃です。

すし、うなぎ、てんぷら ~林 修が語る食の美学