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スマートなスポーツ観戦はスマートなアプリから

Jリーグ DAZN スマートスタジアム Venue Next Intel Super Bowl アプリ

子どもの頃、ヤクルトファンでした。よく神宮球場へ行ったものです。弱いチームだった頃でしたので、球場は空いてました。ある時のことです。対戦相手は忘れましたが、何故かその試合はラジオ中継が行われていたのです。ふとラジオのスイッチを入れ、実況中継を聴きながら試合を見ると、とてもよくわかることに気付きました。そう、野球を野球場で見ながら、ラジオの実況放送を聴くことがこんなに素晴らしいなんて!きっと僕しか気づいていない、大発見だと思いました。しかし、家に戻って、父に勇んで話したらところ、一言で否定されました。無駄だと。ラジオの電池の無駄と。

最近のIT業界のトレンドのキーワードの一つに「スマートスタジアム」があります。インターネット環境を整備し、観客が発信しやすくしたり、スタジアム内向けのコンテンツ配信を行って観戦の際の満足度を高めることが出来るようスタジアムにすることです。Jリーグも例のDAZNのお金があるので、スマートスタジアム化が急務だとして、取り組んでいるようです。でも、生で見る以上の価値を見いだせないと、僕の父の一言、「無駄」で終わってしまいます。

ほとんどテレビで見る程度にしか、縁の無かったスポーツでしたが、ここのところ、仕事柄ではないのですが、スポーツ観戦の機会が結構増えました。昨年10月にイギリス・ロンドンのエミレーツ(Emirates)スタジアムで、プレミアリーグサッカーのアーセナル(Arsenal FC)対サウザンプトン(Southampton FC)の試合、12月にはアメリカ・サンタクララのリーバイス・スタジアムでアメリカンフットボールNFL(National Football League)のサンフランシスコ・フォーティーナイナーズ(SAN FRANCISCO 49ERS)とニューヨーク・ジェッツ(New York Jets)の試合。人生で初めてのアメフト、それも生の試合でした。そして日本でも、横浜でクラブワールドカップ2016の決勝戦鹿島アントラーズレアル・マドリード(Real Madrid Club de Futbol)を見る幸運に恵まれました。つい最近も、仙台でJリーグベガルタ仙台ヴィッセル神戸の試合を見て来ました。

NFLは、このスマートスタジアム化に熱心で先進的です。カルフォル二ア州サンタクララのリーバイス・スタジアムで、「スマート・スタジアム」を体験してきました。シリコンバレーのお膝元として、2014年に改装された際に最新のスマート技術が導入され、昨年の第50回スーパーボール(Super Bowl)の会場となったスタジアムです。

その目もくらむような高さの3階席で試合を見ました。場外のデジタルサイネージで、インテルが360度映像のデモを流していたりして、本番での映像を期待しましたが、実際はハーフタイムに犬がフリスビーを空中で咥えるショーだけに対応していました。犬の妙技、360度映像で見ると、結構、面白い。

観戦には、このスタジアム用のアプリを事前にダウンロードすることがマストです。スタジアム内のWi-Fiに接続します。超高速感。アプリから食べ物が注文でき、届けてもらうことも出来、さらにその待ち時間が表示されたり、はたまた直接買いに来た方が早いと表示されたり、さらに会場の大スクリーンにも投映されているプレイバック等がアングルを選んで見ることが出来たり、アプリが大活躍します。映像は観客が少なかったせいかはわかりませんが、表示もサクサクでした。今年の第51回が行われたテキサス州ヒューストンのNGRスタジアムも、来年第52回が行われる予定のミネソタ州ミネアポリスのU.S.バンク・スタジアムもスマートスタジアム化されており、それぞれのスペックを見ると、このリーバイス・スタジアムを標準としている感があります。(ちょっと面白いデータがあります。第50回、51回ともほぼ同じなのですが、WiFiの同時接続ユーザー数が全観客のおよそ50パーセントなのです。これは接続上限の設定に参考となる数字ですね。)

リーバイス・スタジアムのアプリは、Venue Nextというベンチャー企業が手がけています。NFLダラス・カウボーイズの本拠地AT&TスタジアムやMLBのニューヨーク・ヤンキースヤンキーススタジアムなどとも契約して事業拡大しているようです。確かにアメリカでは、エンターテインメント施設やイベントでのアプリ導入はトレンドになっています。ご存じの通り、ラスベガスで行われるCESやNABと言った巨大展示会では必ず専用アプリが公開されています。
何かを見ながらのアプリと言えば、放送が見ながら使うアプリ、コンパニオンアプリの開発が一時、流行していました。特に日本では。しかし最近、放送局によるコンパニオンアプリの開発は縮小傾向にあります。例えばイギリスの公共放送局BBCはいくつかの実験の結果から効果無しと判断して、開発を数年前にストップしています。その理由を訊いたことがあるのですが、テレビスクリーンを見ながら、もう一つのスクリーンを見させるのは無理があるとのことでした。テレビを見ながら、メールを送ったり、SNSに投稿したりするのは当たり前ですが、テレビスクリーンと併走するのは無理とのことですね。日本では、NHKの紅白歌合戦のアプリ以外には、効果があった例はないでしょう。おそらく世界で唯一の効果例かもしれません。
さらに、Wi-Fiもさることながら、携帯電話のインターネット網もサクサクで、輻輳感はまったくありませんでした。これはベライゾンが導入しているDAS(Distributed Antenna Systems)と呼ばれる分散アンテナシステムの効果だとか。DASは、AT&TやSprintなどの他の携帯電話事業者の回線に対しても有効だと言われています。

今年の中継局FOXテレビが、生中継放送の中で使った「Be the Player」という呼称のサービス。先ほど犬のショーで使われていたと書いたインテルの技術を応用しています。元々は、インテルが買収したReplay Technologyという企業の360度リプレイ映像技術。バスケットボールでのテスト映像も見たのですが、シュートした瞬間の映像を、コートを取り囲むように配置された36台の4Kカメラから得られた映像情報をクラウド上で処理し、360度映像を瞬時に作画できるというものでした。ダンクシュートした選手が空中でストップモーション。そしてぐるっと回転して、反対側からのアングルで見られます。マトリックスですね。生放送に使えるように作画できるとしていました。しかし今回は、このような360度動画ではなく、制止画でクォーターバックがパスする際の目線の表現などに使われていたようです
日本に来ていたNFLの映像には含まれていなかったので、自分の目では見られませんでしたが、アメリカに住んでいるスポーツデータ業界の友人に感想を訊きました。さして印象無しとのこと。やはり放送での表現が静止画どまりだったからでしょうか。
この手の技術は、生中継の放送向けでもあるのですが、放送となると、一手間も二手間も増えます。放送画質に作画しなければなりませんし、得点に関するものでしたら、間違いがないよう画面に出す前にチェックも必要です。しかしスタジアムに来ている観客の手元に配信する程度でしたら、さして手間がかかりません。
360度映像は、先ほど述べたようにリーバイス・スタジアムではハーフタイムショーで活用されていましたから、NGRスタジアムの本番では何故使わなかったのでしょうか。

日本でもアメリカでも、スポーツ業界の共通の悩みは、視聴世代層の偏り。若者が付いてこないこと。それをなんとかするために、スマートフォンを手放さないライフスタイルの若者たちを惹きつけるために、スマートスタジアム化することを選択しました。

生で観戦することがスポーツの醍醐味です。その時、手元で見ることが出来る情報は何がいいのでしょうか。売店やトイレの情報は当たり前、「あっ。これだね。」とインパクトのある一つが発見出来れば、それがキラーコンテンツとなります。まだまだ見つかっていないと思います。そして、それを届ける素敵な、スマートなアプリも日本にはまだありません。「無駄無駄無駄無駄」と連呼されないよう、頭を使い続けましょう。

男子化粧品考ー山猫軒の僕

高城剛 花粉 e-bay SK-Ⅱ 資生堂 ケラスターゼ

花粉の季節です。こんな時、男子でよかったと思うことは、お化粧をしないで日常を過ごせることです。女子の皆さんは大変。花粉で目がかゆい、目の周りもかゆい。鼻もかゆい。鼻水が出る。お化粧との兼ね合いが悩ましいところです。

確かに、お化粧はしていませんが、化粧品は使っています。もちろん男性用。しかし、思い起こせば、いつから男性用化粧品ってあるのでしょうか。もちろん、マンダム(チャールズ・ブロンソン!)やらアウスレーゼ草刈正雄さん!)やら、化粧水系はずいぶん前からありましたが、洗顔とその後のケアから、というのはいつからあったのでしょうか。

大学生の頃、クリニーク・フォー・メン(Clinique for Men)が専用ポーチと共に登場したことは鮮烈に覚えています。とにかく、持ち歩き用のミニサイズのクレンジングフォームと化粧水がグレーのロゴ入りのポーチに入っていたことがポイント高し、でした。タオルとそのポーチをバッグに入れて持ち歩き、時間があれば、学校の水道で、バシャバシャ顔を洗っていたものです。その後、いろいろなものに浮気して、これと言ったマストアイテムはありませんでした。

2004年に発売された資生堂メン(SHISEIDO MEN)もしばらく愛用しました。統一されたデザインが素敵です。クレンジングフォーム、スクラブ、ローション、エマルジョン、そしてセラムまで使っておりました。なんと言っても、花椿会の会員証がうれしゅうございました。

そしてここ数年は、ついにSK-Ⅱ。MEN'Sラインが登場したことで、桃井かおりさん、はたまた綾瀬はるかさんのモノマネをついつい練習しながら使ってしまいます。問題というか、少々ややこしいのは、飛行機に乗るか、飛行場に行かないと買えないこと。このためにもマイル修行は欠かせません。
ここに至って、化粧水がやっと上手に着けられるようになりました。だいたい、化粧水はたっぷりと言われても、掌からこぼれるこぼれる。最近はコットンを使うことに目覚め、やっと顔に化粧水が乗っている感じが出せるようになりました。
洗顔石鹸をネットに取り、たっぷり泡立てて、顔を洗います。これも上手くなりましたよ。シャワーでの一連の作業の最後にこれが来るので、その後、シャワーから出て、身体を拭き、髭を剃ってから、化粧水の散布になります。そして、頭にトリートメント。ちなみに、週1度、または直射日光を浴びてのランニングの後は、エマルジョンと目の周りのアンチエイジングのセラムを摺り込みます。

そうそう、頭を洗う段取りも単純ではありません。高校生くらいから、シャンプーに凝っておりました。18歳の時から、朝と晩、2回のシャワーを浴びています。で、2回とも頭を洗う(そんなに頭を洗って、そもそも頭髪はどうなっているのだというご質問があろうかと思います。おかげさまで、年齢も年齢なのですが、毛量も多く、真っ黒で、ふさふさしております。昔、金髪に銀髪、ロン毛にパーマと結構、負担を掛けてきたのですが、大丈夫です。ちなみに父は30代からバーコードでしたが。不思議です。)ので、バカにならない量のシャンプーを使ってきました。そして、ここ数年はケラスターゼの男性用(Kerastase Homme)を愛用しています。キャピタルフォルス1シャンプーという頭皮の臭いの改善を謳ったシャンプーがありした。発売初期の広告には、お父さんの枕のにおいが変わるみたいなコピーがついていましたね。洗い流さないトリートメントもあります。HOソワンキャピタルフォルスという長い名前でシャンプーと同じ香り。胡椒っぽい、さっぱりとした香りです。ところが、この男性用、ラインがあっという間に縮小され、シャンプーもトリートメントも国内の正規販売がいつの間にやら、終わってしまっていました。国内で手に入らなくなってからは、e-bayを利用して、世界中から個人輸入していましたが、昨今ではもうほとんど見当たらなくなりました。秘蔵の3本、使い切ったら、新しいものに挑戦しなければなりません。シャンプーは既に、新しいラインであるデンシフィックオム(DENSIFIQUE HOMME)に切り替えました。

石鹸も、凝り出すとキリがありません。いろいろ試しましたが、最近は「毛穴撫子 重曹つるつる石鹸」を愛用しています。高城剛さんの本で紹介されていたのですが、彼はこの石鹸で洗うと、全身の毛穴から臭いが出ると言いますが、どんな身体なのでしょうか。彼とほぼ同い年ですが、そうでもないのですが。この石鹸の凄いところは、どんなに小さくなっても泡立つことです。

 

さてこうなると、いざ旅行という時、持って歩く必需品が増えてきます。国際線の検査を想定して、透明なポーチに入れるのですが、意外に嵩張る嵩張る。女の子の家で、なんでお風呂場にタマネギが入っている網があるのか訝しげに思っていた時代が懐かしい、洗顔用フォーム泡立て用ネットの旅行用から始まり、シャンプー、トリートメント、化粧水(滞在先が南の島でない限り、セラムは持ち歩かないようにしています。)、コットン、シェイバー、それに無駄毛シェイバー。年のせいか、耳たぶの内側や黒子に、馬鹿毛というのでしょうか、とんでもなく長くなる毛が生えるのです。鼻の中もそう。見つけた瞬間に瞬殺するのですが、時として、それを逃れる毛があるので、定期的なお手入れ用に手放せません。そうそう、髪の毛をツーブロックにしているのですが、頭頂部の少し長い毛の流れを揃えるために、ワックス類を使っています。いまは、シエラオーガニカのオーガニックハーブワックス。ハンドクリームとして使うことが出来るワックスです。ソフトとハード、使い分けています。そうだ、最後にオードトワレ。ここ5年は、ヒューゴボスのジャストディファレント(Hugo Boss Hugo Just Different)です。それ以前は長い間、ジョルジオ・アルマーニのプールオム(eau pour homme)でした。シャネルのエゴイスト(Chanel EGOISTE pour Homme)を使っていた時期もありました。ご存じのように、香りにも流行があります。あ、昔の匂いと思われると厳しいのです。このヒューゴボスの香りも長くなりました。そろそろ、次の香りを探さないと。しかし今は、詰め替えたアトマイザーは必携です。

シエラオーガニカ S&S オーガニックハーブワックス ソフト50ml

シエラオーガニカ S&S オーガニックハーブワックス ソフト50ml

 

 

と、ここまで書いた過程は、家でも一緒です。外出前の支度に時間がかかるかかる。起きてから小1時間ないと、出られません。もっとも、さらに服選びと靴選びにも時間を要しますが。はてさて、これはなんのためなのでしょうか。
宮澤賢治の「注文の多い料理店」を思い出しました。衣服を脱がせ、金属性のものを外させ、酢のような匂いする香水を頭から掛けられ、最後は塩を身体に揉み込むように“注文”される2人の紳士。実は料理の素材として、食べる(食べられる)ための下準備だったことに気付き、というお話です。さて、西洋料理店山猫軒に迷い込んだ僕の運命はこれいかに。

 

注文の多い料理店 (新潮文庫)

注文の多い料理店 (新潮文庫)

 

 

阿房飛行機、万歳!

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仙台に行くために東北新幹線に乗りました。はやぶさ。進行方向左側、西日暮里から田端にかけては、武蔵野台地の東端ですかね。山手線と京浜東北線が走っている向こうの崖の感じが素敵です。NHKのブラタモリじゃないんだから。
乗り物に乗ったら仕事をしようと思うのですが、大概、外を見てしまって、ダメです。子どもの頃は都電が日常の乗り物でした。都電の車掌さんごっこが好きだったと母親に言われました。と、書くといったい、いつの時代に生まれたんだと思われそうですが。
新幹線では、Googleマップをついつい立ち上げて、場所の確認をしてしまいます。自分の現在地を表す点がすごい勢いで移動していくのも楽しい楽しい。乗り物大好きなのです。

乗り鉄」という言葉もやや人口に膾炙してきた感がありますが、列車に乗ることだけを目的とする旅があることを世の中に宣言したのは、大正から昭和にかけて作品を発表した作家であり随筆家であった内田百閒先生でしょう。「阿房列車」という作品の「なんの用事もないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思ふ。」という一文が有名です。(ちなみに、御著書は読んだことはありません。また、百閒先生関連で「まあだだよ」という百閒先生と教え子たちの交流を描いている黒澤明監督の最後の映画は見ましたが、僕にはよくわからない映画でした。)

第一阿房列車 (新潮文庫)

第一阿房列車 (新潮文庫)

 

 

さらに、ラテンミュージシャンで餃子店オーナーシェフ公認サンタクロースパラダイス山元さんのように飛行機に乗ることを目的とする旅を行い、年間1000回を超える搭乗回数をこなしている方もいます。かく言う僕も、飛行機に乗るためだけに旅行することがあります。“阿房飛行機”ですね。

 

ご存じの方も多いと思いますが、飛行機会社はマイレージを貯めることによって、いわゆる特典サービスを提供しています。お客さんの囲い込みのために便宜を図る訳ですが、それを得るためには、飛行機に乗らなければなりません。お金もかかります。マイレージによる無料航空券を目的としている方もいますが、僕は面倒くさいのでマイレージによる航空券、いわゆる特典航空券を使ったことはほぼ皆無です。自分の都合と予約がとれる日程を調整するのが面倒なのです。では何のために貯めるのか。実は貯めることすらも、目的ではないかもしれません。マイレージと同時に累積される会員ステータスのためのポイント、プレミアムポイント(ANA会員)の獲得と会員ステータス維持のためだけに飛行機に乗っているのです。厳しい修行です。いずれにしても、飛行機に乗ることが趣味として確立しているのか、議論を要するところでしょう。


この趣味は、旅の予定を考える際に、病膏肓に入るといった症状を見せることがあります。例えば今回のように東京から仙台に行く場合、仕事が終わって帰路が自由で、その日に予定がないとしましょう。仙台空港に出て、仙台から大阪・伊丹空港または福岡に飛び、伊丹または福岡から東京・羽田へ戻るというルートを考えてしまうのです。バカじゃなかろうか。そこまでして、プレミアムポイントを貯めたいのか、という旅程。まさに“阿房飛行機”。
別にCAさんにモテたいから、CAさんと接触する機会をたくさん持ちたいから乗るのではありません。もちろん嫌いじゃありませんよ。どちらかというと、ウエルカムです。少なくとも僕の経験上、搭乗回数が多いからという理由でCAさんにモテるという人はいないと思うのです。敵も然る者、“阿房飛行機”数奇者であることはバレますから。

さて、記録にあるだけでも地球を26周した程度しか飛行機に乗っていない、まだまだ初心者の僕ですが、たまに事件と言いますか、ちょっとした失敗を犯します。
イギリス・ロンドンから日本への帰途、フランクフルトでの乗り継ぎ便でのことでした。ロンドンの出発が遅れたため、乗り継ぎ時間がギリギリ。搭乗するのは、ルフトハンザ(Lufthansa)のA380。エアバス社製の世界初の総2階建ての大型ジェット機です。2階のビジネスクラスの一番後ろのシートでしたので、最後尾の扉から走り込み、螺旋階段を駆け上がりました。息も絶え絶え。離陸して一安心。しばらくして、ミールサービスが始まりました。その時、早朝にロンドンを経っていたので、強烈な眠気が襲ってきました。なんとかメインを食べ終わり、さてチーズとデザート両方もらうおうかと思案しながら待っていたら、寝落ちしてしまいました。はっと気づいたら、機内は就寝モード。この機体の2階はファーストクラスとビジネスクラスのみ。100席近くもビジネスクラス席があると、なかなかサービスは進まないものです。A380はANAがハワイ路線に導入するようです。ルフトハンザ機では、垂直尾翼に着いたカメラの映像を機内で見られました。ANAの380でも見られるといいですね。雲を掻き分ける感じが素敵です。

ちなみに、機内食と言えば、エールフランスビジネスクラスに乗った時、牛肉の赤ワイン煮込み(Boeuf bourguignon)が出ました。やはり旨い。エールフランスワンワールド傘下なので、滅多に乗らないのですが、これはまた食べてみたいと思いました。東京でもフランス大使館のちょっとしたパーティーの際に、この料理をいただいたことがあります。やはり大量にワインが投入されている感があり、とても旨かったことを覚えています。お国料理ですもんね。
極め付けではないのですが、虎屋の羊羹で一悶着あったことがあります。ロンドンからイタリア・トリノへの移動の時、ちょうど前日、ヨーロッパ内の空港でテロがあり、警戒が厳しくなったところでした。ガトウィック空港までの列車も便数が制限され、駅に列車が到着するなり、LCC利用者が爆走して行きます。出国検査の際、厳しい顔の係官が僕の鞄から取り出したのは、虎屋の羊羹「夜の梅」。一時期、外国へのお土産に愛用しておりました。切り口の小豆が夜に咲く梅の花を思わせるなんて、口上を言いながら渡したものです。この時までは。しかし、形状が微妙でした、微妙なタイミングなので。可塑性のある爆薬に似ていると言えば似ています。アメリカ式に言えば、Composition 4というのでしょうか。係官が集まってきて、皆で羊羹をグニグニと揉みしだきます。これは日本の伝統的なお菓子で、豆を甘く煮て固めたものだと説明しました。それならばジャムだと判定され、放棄しないなら、預け荷物に入れろと言われて、検査所を追い出されました。

老舗の流儀 虎屋とエルメス

老舗の流儀 虎屋とエルメス

 

 


その時、厳しい顔つきで、僕の鞄をひっくり返していた係官の一人が、いつも一緒に旅をしている豚の小さいぬいぐるみを見て、不思議そうな顔をしていました。その子豚をつまみ上げながら、僕の顔を見て、ちょっと吹き出しそうでした。
阿房飛行機、まだまだ続きます。

メガネは顔の一部です~魔法の時代に大魔王の存在は気付かれないように

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「メガネは顔の一部です」というCMがありました。まさにその通り。たった一つ、メガネを選ぶとしたら、自分らしいメガネを必死に選びます。一方、メガネをいくつか持って、いろいろ掛け変えている人はどれくらいいるのでしょうか。
僕は、メガネ、コンタクトレンズ、老眼鏡、サングラスの4種類装備で暮らしています。日常はメガネです。天気によって、クルマを運転する時はサングラスです。机で仕事するときは老眼鏡、そしてマリンスポーツの時だけコンタクトレンズです。
ちょっと前まで、メガネのフレームに色つきのものをかけている人はほとんどいませんでした。僕はオレンジ色が大好きでテーマカラーなので、10年ほど前にフレームの内側にオレンジ色が入っているメガネをかけていましたが、当時、そんなものをかけているのはおかしい人と言われていました。しかし、今や普通のおじさんが白いフレームのメガネをかけていたり、結構、デザイン性の高いフレームを使っています。ほとんどが似合っていませんが。

ウェアラブル端末の迷走は、まったく、メガネのTPO(古い言葉!)を考えないグーグルグラス(Google Glass)から始まりました。最近でも、スナップチャット(Snapchat)が写真と動画をとれるメガネ(Spectacles)を発表しましたが、冗談かと思いました。あんなもの掛けて外出したら、グループサウンズ時代の鈴木ヒロミツさんか、ガチャピンの相棒ムックに間違われますよ。いや、「林檎殺人事件」?(まさかAppleを葬るというメッセージのために郷ひろみさんと悠木千帆さん〔今の樹木希林さんです〕が歌う際に掛けていたサングラスになぞらえるとは。そんな訳ないね。)発表されている写真や紹介動画の意味もわからない。だって、カッコわるいもん。何着てる時につけるの?日常的にメガネを掛けている目が悪い人はどうするの?何も考えて提案されていません。機能だけが全面に出されています。どんな髪型に合うと思っているのでしょうか。

新しいものが登場した時、それが今まで慣れ親しんだものに置き換えられるのが、一番スマートな流れです。新しく登場する便利なものは、日常の生活の中で、どのようにその立ち位置を確保するのでしょうか。いつ身につけるものなのでしょうか。今ある習慣のどれかを変えさせるのでしょうか。新しいものと言えば、セグウェイが空港などの警備で使われているのも、目線の高さやその存在感というものから導き出された利用法でしょう。騎馬警官の置き換えですかね。

アメリカ大統領の警護を担当するシークレットサービスの面々が使っているサングラスには、ヒンジのところに小さい鏡が着いているそうです。前を見ながら、予想外の“後方の動き”を察知するためです。これは見ていないようで見ているというサインを発するための、ちょっとした仕組み。見ている、撮っているというサインを明確に示すことでさまざまな効果が出てきます。

視線が正しく向けられるべきものという意味で、やはりメガネ系のウエアラブル端末は、医療分野や警備分野にまず導入されるべきものでしょう。馬と馬車をクルマに変えるにはインパクトが必要です。とにかく便利なんだ、ここにこれがあるのが正解だと思わせるインパクトが。

AppleApple Watchの発表時、Vogueにタイアップページを持ったのは正解だと思います。でもファッションとしての正解は示されてはいませんでした。

ファッションというと、俺はそんなことは気にしない、と豪語される方がいるでしょう。でも、ファッションに気を使うというのは、他人から見える姿をコントロールすることです。他人から見える自分について、まったく気にしないというのは、デザインなんて要らないと言っているようなものです。デザインはその機能に本質的に結びついているのものですから。

Googleにその感覚はないと見える時があるのが不思議です。音声アシスタント端末Google Homeなんて、日本の家にある芳香剤と間違われます。まじめにデザインしているのでしょうか。そもそも単体の家電製品というのが間違っています。機能では一番と言われているAmazon Echoだって、どこに置くか考えているのでしょうか。家の中の置き場所も考えた形にしないと。だってコンセントが必要なのですよ。しっぽが着いているものは、意外に置き場所を考えます。だから、ウェラブル型のメガネ型である必要が全くないのと同様に、単独の端末は間違っています。家庭内にある何かにビルトインされているのが正解です。それは、どの部屋にもあって、ネットワークへの接続のための電源が常時供給されているもの。照明以外にはないでしょう。デザインの素敵な照明器具メーカーとまずはタイアップすべきです。あとはコンセントかな。(妙な例えですが、盗撮グッズの置き場所と同じような考え方になります!)存在感を主張しないほうがいいのです。
魔法の呪文を唱える時は、空間に向かって唱えるでしょう。オズの大魔王はカーテンの陰で操作しているのが気づかれてしまい、その正体が露呈します。大魔王の姿は見えてはいけないのです。(オズの魔法使 [Blu-ray]

「魔法」という言葉は、メディアアーティストで、筑波大学助教の落合陽一さんの著書「魔法の世紀」からいただきました。20世紀が「映像の世紀」なら、21世紀は「魔法の世紀」である。書中に「存在を意識しないほど高度な技術は魔法に等しい」というお言葉があります。逆に言えば、存在を意識させる(=インターフェイスが自然ではない)インターネット技術の普及は難しいでしょう。

ちなみに、VR関連機器も魔法の度合いがまだまだ不足していると思います。ゴーグルをかぶるなんて、せっかく作った髪型が壊れてしまいます。だいいち暑い。
ウェラブル端末は、そのウェアラブルという言葉の意味を考える必要があるでしょう。魔法を揮うのに、ウェアラブル端末は重大な役割を果たします。魔法使いは小さな木の杖を持ってますからね。あの程度の大きさで、一振りみたいな簡単さがいいですね。

ダンス振付家の友人と話していた時にはたと手を打ったことがありました。無理な振付は結局、どんなにカッコよくても、覚えられないんだそうです。音楽に合わせた自然な身体の動きが要求されるということです。ウェアラブル端末ならではのインターフェイスも同じでしょう。

そうそう、魔法と言えば、魔法つかいサリーちゃんを思い出します。最終回、悲しかったなぁ。学校が火事になり、取り残された同級生を助けるために、衆目の中、魔法をつかったサリーちゃんは、人間の世界から去るしかないのです。

乱暴者の独り言〜どこに向かうのか

NHK DeNA コンプライアンス フリースタイルダンジョン 記者会見

DeNAの医療系サイト「WELQ」コピペ大会が引き起こした一連の問題に関する第三者委員会報告が出ましたね。その会見と引き続きのDeNA幹部の記者会見を見ていました。いろいろ突っ込みどころはあるのですが、このこと自体は、これしかないでしょう。MERYが再開することはないでしょう。DeNAの社内にあった“マニュアル”は誰が作ったのでしょうか。まさか印刷物で残ってるわけでじゃないのだから、誰が作ったかわかるでしょう。そんな技術もないのでしょうか、DeNAは。

気になるのが、噂の村田マリさんのこと。事業責任者である村田さんは辞任の意向。この“意向”ってのは、海外在住だからメールのやりとりが基本なので、ということですが、つまり顔を合わせてないからってこと?この問題、およそ3ヶ月に発生しています。その間、一度も日本に戻られていないのでしょうか。社長の守安さんが村田さんからの売り込みで、この事業を買うことにしたのが全ての始まりと言われています。そして、その買収以前から、村田さんがお持ちの事業の中でも、今回の問題と同じように他人のサイトからのコピペと独自のSEO対策で高い収益を上げていらっしゃったということですよね。それなのに、村田マリさんは全く、表に出ないまま辞任されると。上手く逃げ切れるでしょうかね。NewsPicksでどなたかが、ほとぼりが冷めたら同じ手法で復活してくるとおっしゃってましたが、僕もそう思います。投資家のご主人の判断なのか、ご本人なのか、それともDeNA首脳陣の判断なのか、ここで顔を晒して謝っておけば、後でまた舞台に上がれるのに。これで再登場の時のハードルがとても高くなりましたね。

プライベートバンカー カネ守りと新富裕層
 

 

記者会見では、事業の定義が曖昧、管理体制が不十分だったとまとめています。DeNAとしては今後の発展性を見込んで、キューレーション事業に成果を出していたスタートアップ事業者を買収して始めたが、その事業の潜在的な問題に気づかなかった、社内コミュニケーションが不十分だった、と。

村田さんのことは、出処進退の態度としては疑問いっぱいですが、事業責任者の対応が厳しく、ベンチャーの尻尾切りに見えるという質問も出ていました。そうインターネット事業の失敗とその幕引きに関しては、よくある流れになりつつもあります。

日本企業で、本社から自分だけみたいな小さい支店の海外駐在や、組織の中で傍流にあって何でも自分でやらないとならないような立場におかれると仕事を進める力が着きます。社内ベンチャーのようなものです。特に現場の裁量権が大きい会社ではよくあることに思われます。そのように暮らしてきた人が、日本の本社に戻ったり、組織の主流に入ったりして時、今までのつもりで仕事をしていると、どこかで足を掬われます。決裁を仰ぐ以前に、なんでも上席に報告して、判断をもらう、または言っておく。独走していませんよ、という態度を見せる人にならないと大概、失敗します。 上席に、よほど信頼されていなければ、アイディアにあふれたリーダーが革新的または前例がないことを進める際に、ある日突然社内全体が敵になります。通常の業務手続きを取りながら、さまざま進めていたのに、コンプライアンスの違反者として、管理系から追求を受け始めます。社内の業務手続きに穴があり、それが周知のことになるような場合はなおさらです。(「フリースタイルダンジョン」という番組、ご存じですか?テレビ朝日で火曜深夜に放送されている、その名の通りのフリースタイル=即興のラップバトル番組です。AbemaTVでも配信されています。即興なので、素人の出演者がついつい放送に相応しくない言葉を使ってしまうことがあります。その際に、その言葉に上乗せされる音が「コンプラ」と呼ばれています。単なる「ピー音」ですが、これによってコンプライアンスという言葉、中学生でも知るところになっています。2016年12月31日に放送された「東西!口迫歌合戦」という年末特番は、最終的な視聴者数が340万に達したという人気プログラムです。)

いろいろ起きると、やはりみんなで共有しないと、と言う人が出てきます。共有ねぇ。まぁ、こうなると、実施までの速度が格段に低下します。だいたい人間関係の共有なんて、出来ると思っているのでしょうか。仕事上の人間関係は貸し借りに基づいていることが多いものです。名刺を共有情報にすれば、社内で人間関係が共有出来るなんて、全くの嘘です。築き上げてきた関係から得た情報なのに、独り占めしていると言われるようになっているでしょうから、メールはなんでもCCすべきだなんて、言われるでしょう。もう終わってますね。

一般的な全ての組織に当てはまるかはわかりません。でも、現場の裁量権を小さくしていくことは何をもたらすのでしょうか。さらに人口が減ることで労働人口も減り、さらに“ほどほど”であること、みんなで同じ歩調で歩くことを求められるようになると、いろいろなサイクルが縮小に向かうように思います。不祥事が起きた会社では、その時期に入社した新人は自分で判断せず、何でも訊いて指示を受けてから行動する社風の中で育つので、なかなか自立しないとか。それを思い出しました。

DeNAの記者会見から毎度の脱線でした。乱暴者の言うことで恐縮です。

知るということ、知っているということーそしてどうする

松岡正剛 辻静雄 青葉台 林修 荒俣宏 海老沢泰久 開高健 ライアル・ワトソン コリン・ウィルソン ニューエイジ

日曜日の夜のテレビライフ。ここ最近は21時から「A LIFE」。22時からは、林修さんの番組「林先生が驚く初耳学!」を観ています。林さんは1965年生まれということですから、僕とほぼ同い年。勝手に物知り度を競いながら観ています。やはり結構、負けています。断片的な知識ではなく、体系的に蓄えている知識に、時として脱帽します。

しかし僕にとって、凄い物知りと言えば、1人しかいません。松岡正剛先生です。もう70歳を越されたのですね。ちょっと前ですが、渋谷のMARUZEN&ジュンク堂書店で、お見かけしました。と言っても、親しく声をお掛けする間柄ではないので、遠くから黙礼させていただきました。

代官山というか青葉台のマンションにお訪ねしたのは25年くらい前のこと。夏。1990年だと思います。マンションの一室、天井まである本棚。冷んやりした空気の中、会社を辞めたいとかなんとか言っている青二才の僕に、松岡正剛先生は「翔ぶのは今ですね」と。

 

20代に入ったばかりの頃、荒俣宏さんの本に出会いました。「帝都物語帝都物語 第壱番<帝都物語> (角川文庫))」です。他の荒俣さんの他の本に手を出そうとしたら、工作舎のラインナップにぶち当たりました。「理科系の文学誌」、「大博物学時代ー進化と超進化の夢」、「本朝幻想文學縁起ー震えて眠る子らのために」。装幀も印象的な忘れられない本です。

同時にこの頃は、今思うと若気の至りか、ライアル・ワトソン(Lyall Watson:ニューサイエンスと呼ばれた1980年代のムーブメントを代表する学者:「生命潮流(生命潮流―来たるべきものの予感)」の内容が全て創作だったとは!)とコリン・ウィルソン(Colin Wilson:イギリスの作家、評論家)に入れ込んでいました。

ちょうど1984年でしょうか、弘法大師入定1150年御遠忌の大イベントとして、ライアル・ワトソン、フリッチョフ・カプラ(Fritjof Capra:アメリカの物理学者、システム理論家)、コリン・ウィルソン、松長有慶(高野山真言宗総本山金剛峰寺・第412代座主)、そして松岡正剛というメンバーが空海密教について語り合うという、今思うと僕的オールスターキャストが一同に会するイベントが行われました。僕はいざ鎌倉(という気分で)と、東京から早朝の新幹線、南海電鉄を乗り継いで、高野山に参りました。ちょうど、高野山を登る登山電車に怪しい男性、なんだか気になる男性と乗り合わせました。後から思うと、あれは荒俣さんだったのではないかと思っています。そして、僕の興味の向こうには、どうやら松岡正剛という人が聳え立っていることが、だんだんわかってきました。

工作舎物語 眠りたくなかった時代

工作舎物語 眠りたくなかった時代

 

 

とにかく、入って2年ばかりしか経っていない会社を辞めたいと思うことがありました。社外のある方に相談したところ、松岡先生にお世話になったらということで、青葉台に伺った次第。その頃、その方はアルファスパイダーにお乗りで、僕はアルファとしては格落ちですがアルファスッドに乗っていたというご縁もありました。また最新のガジェットをお持ちの方で、ニュートン(Apple Newton Message Pad)を見せていただいたりしました。ニュートンは、僕の手書きは全く判別しなかったことを覚えています。まさか、漢字や平仮名を書き順で判断しているわけではなかったでしょうに。ちなみに日本ではアルファベットまで、小学校で書き順を教えるので、テレビに出ている外国人が手書きで何かを書く時、当然ながらまったく書き順もへったくれもなく書くので、視聴者から書き順が違うとクレーム電話が入ったりします。

さて、とても暑い夏の昼下がりでした。旧山手通り沿いに門があり、建物までは100メートルくらい歩く、奥まったマンション。その静かで、冷んやりとしたエントランスにある案内に松岡正剛事務所、それに編集工学研究所と分かれてありました。さらに、辻静雄、とありました。そう、料理界の東大、辻調理師専門学校学校(通称:辻調)総帥の辻さんの御宅も、同じ青葉台のマンションにあったのです。元はナイジェリア大使館の大使公邸だったいう白亜の建物です。

あぁ、このマンション、松岡先生だけじゃなくて、辻静雄さんもお住まいなんだ。開高さん(作家・開高健)の「最後の晩餐 (文春文庫 か 1-5)」にある、あの晩餐会が行われてるんだ。僕にとっては、ギリシャの神々の神託を受ける、デルフィの神殿のような場所に思えました。

料理天国」という番組、覚えていますか?1975年からTBS系列で放送されていた料理バラエティ番組です。そこに出演し腕を揮う辻調の教授たちは、和、洋、中の一流の料理人。辻調では毎年ヨーロッパの著名レストランを周り、世界の最新料理情報を集めるというグランドツアーが行われていました。そこに参加したことのある、凄腕の料理人たちが最高の食材を使って料理を作り、ゲストが食べて感想を言う。一度でいいから、参加してみたかったと思う番組でした。

この番組と同じことが青葉台の辻邸で行われていたのです。この晩餐会は辻調の教授たちの腕を辻さんが試す場であり、ゲストに本当のフランス料理、中華料理、そして日本料理を伝える場だったと思います。

辻さんは古今東西の料理に関係する書籍の蒐集家として知られていました。特に古典フランス料理に関する稀覯本のコレクションは世界的なものだった言われています。

辻さんの生涯については、ノンフィクションライター海老沢泰久さんの小説「美味礼讃 (文春文庫)」(1992年刊)にくわしくあります。辻さんは1993年に60歳で亡くなりました。早過ぎ。早かった。早逝です。あのマンションも既にありません。

 

松岡先生の言葉に後押しされたにも関わらず、僕は結局、その時は辞めずに、勤め続けました。50代の入り口に二度目のタイミングがあり、そして三度目の正直ではありませんが、三度目のタイミングで辞めました。あの暑い夏の一日から25年以上の歳月が過ぎていました。 

松岡先生が監修された本「情報の歴史」。1990年に出版された大著です。(下段にあるのは1996年に出版された増補版です。1990年版は中古でしか手に入らない状態です。)無人島に流されることになった時、本を1冊だけ持っていけるとしたら、何を選ぶかという質問がありますが、僕はこの本を持っていきます。世界史と各国史と日本史を並列にして、さらに年表の中にトピックとなる見出しが入るレイアウトの妙。知らないことだらけ、です。刊行から既に30年近く経っているので、ぜひ追補版を出していただけたらと思います。

情報の歴史―象形文字から人工知能まで (Books in form (Special))

情報の歴史―象形文字から人工知能まで (Books in form (Special))

 

 

人間の脳をハードコピーすることは、今のところ出来ません。だから、その人が亡くなると、その人が知っていたことは失われます。人間関係も同じです。そこにあったものの重大さを知ってしまうと、失われたものの価値に初めて気づきます。

 

映画監督&俳優・伊丹十三さん、ドイツ文学者&評論家・種村季広さんと辻さんの鼎談の中で、種村さんの「食べ物(食べ方=料理法)のバリエーションは、コミュニケーションの量に比例する」との指摘に「知らないということは幸福なんですよ。情報を与えられるということが人間の不幸の始まりなんです。」と辻さんが仰っられました。そして、伊丹さんが「つまり、進歩、発達の始まり」だと。

そう、たとえそれが不幸の始まりだとしても、僕は知らないでいるより、もっとたくさんのことを知りたいと思っています。問題は、そのあとどうするか、ですかね。

 

SFとオルタナファクト

映画 オルタナファクト 16ミリ映写機 タイムボカン スターウォーズ クリストファー・ノーラン

そもそも本離れが進んでいる中、SFという分野は絶滅危惧種になっているように思います。だからでしょうか、SFが好きだと言うとかなりのオタク感があります。そもそも、SFとは何か?サイエンス・フィクションの略というのが一番簡単な答えです。スペキュレイティブ・フィクション=思索的フィクション、という答えもあります。読み物としてのSFは廃れていく一方ですが、ハリウッド映画では次々と大作=お金のかかったSF作品が作られています。合成技術の進歩でどんなもので描けるようになっているからでしょうか。製作者の想像力の翼の広がりは、それこそ無限です。
しかし、大概、宇宙で戦う映画は婦女子受けしません。一緒に観に行ってもらえません。もちろんスターウォーズシリーズが好きだという女子もいらっしゃると思いますが。

僕の好きな映画監督の一人に、クリストファー・ノーラン監督がいます。作品としても、「インセプション(Inception)インセプション (字幕版)」「ダークナイトライジング(Dark Night Rises)ダークナイト ライジング (字幕版)」「インターステラー(Intersteller)インターステラー(字幕版)」がall time the bestに入ってきます。戦争映画ですが、次回作の「ダンケルクDUNKIRK)」にも大いに期待しています。なんたって、IMAX70㎜フィルム撮影ですからねっ。しかし、僕の周囲の婦女子にこの3本は全く評価されません。特に「インターステラー」は長くて理屈っぽい話と思われて、敬遠No.1の作品です。僕がハマる部分とクリストファー・ノーラン監督の作家性が鍵なのかもしれません。

 

さて、何故SFが好きなのか。中学校の図書室がスタート点になり、次々とSF作品に出会ったことがきっかけのように思います。体育館の1階の図書室でした。結構大きな図書室で、それなりに蔵書もあったように記憶しています。そこに早川書房の「世界SF全集」全35巻が置いてありました。司書だった国語の先生が担任だったこともあり、図書室に入り浸って全巻読破。海外の作家では、ジュール・ベルヌ(Joule Berne)やロバート・A・ハインライン(Robert A. Heinlein)、アーサー・C・クラーク(Arther C. Clark)。日本の作家では、星新一小松左京筒井康隆。他の作品に手が伸びていきました。

ついでの話ですが、この先生が16㎜フィルムの上映会を行いました。司書で視聴覚教育の担当だったのでしょう。映画は第二次世界大戦末期のソ連による樺太侵攻の話。当時の樺太の電信局の電話交換手の女性たちが戦火に倒れた「北のひめゆり」事件を描いた映画でした。僕も見ましたし、上映の手伝いをしたような。2学期になると、それが問題になったという噂が流れ、翌年、その先生は転勤。お辞めになったとも。なんだったのでしょうか。

この時の上映の手伝いがきっかけだったのか、自分でも映写機を操作してみたいと思ったようです。まだビデオのない時代(あるにはあったのですが、業務用と同じSonyのUマチック:知らないでしょう?)だったので、16ミリ映写機が学校にはあり、操作資格を持つ先生が1人はいました。この資格を持っている人がいれば、16ミリフィルムを借りて上映出来ることを知った僕は、文化祭で上映会を行うことを企画しました。中学校3年生でした。どうやってリストを手にいれたかは覚えていません。ちょうど「宇宙戦艦ヤマト」に入れ込んでいたのでアニメがいいと、「タイムボカンタイムボカン名曲の夕べ)」と「ミッキーマウス(のなんとか)」を借りることにしました。原資は一人あたり100円供出すると映画が見られると校内で口コミ宣伝して募りました。今で言うファンドです。しかも怪しい。(しかし、よく許されたものだと思います。どうやって許可取ったのだろう?)

タイムボカン」は制作のタツノコプロに直接、借りに行きました。当時のタツノコプロ三鷹の駅の前にあったように記憶しています(違うかなぁ)。そこまでJRではなく国鉄(まだそんな時代です)に乗って行きました。約束の時間までに余裕があったので、駅前の本屋さんに。そこで、グイン・サーガとの邂逅がありました。第1巻「豹頭の仮面(豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) (ハヤカワ文庫JA))」、第2巻「荒野の戦士(グイン・サーガ 全130巻セット(ハヤカワ文庫))」。豹の頭を持つ超絶無敵の戦士グインを主人公として展開するヒロイックファンタジーです。作者の栗本薫さんは残念ながらストーリーはまだまだ続く130巻を書き上げることなく、2009年に亡くなりました。その後、複数の若手作家が続編を書くこと(ペリー・ローダン方式ですかね。どんな方式かって?説明は省きます。)になり、2017年3月現在で140巻まで刊行されています。グイン・サーガとの出会いが、その後のSF好き人生を決めたように思います。

最近では、とにかくSFと現実の境界線はどんどん薄まってきています。もし、現実がこうなったらと考えるような、ノンフィクションがフィクションを浸食しているのような、平行世界(パラレルワールド)的考え方が一般的になっているとも言えます。
だって、オルタナファクトという言葉は、もう一つの事実、現実があると言っていることですよね。
アメリカではトランプ大統領就任で先行き不安なタイミングになったのか、パラレルワールドものSFがフィーチャーされています。フィリップ・K・ディック(Philip K. Dick)「高い城の男(高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568))」がAmazonビデオでドラマ化され、シーズン2に突入する人気、そしてジョージ・オーウェルGeorge Orwell)「1984一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫))」がAmazonの書籍売り上げのトップに躍り出たというニュースがありました。

僕の好きな=購読し続けている漫画「空母いぶき(空母いぶき 6 (ビッグコミックス))」かわぐちかいじ作、「クロコーチクロコーチ(17) (ニチブンコミックス))」リチャード・ウー原作、コウノコウジ作画、「へうげものへうげもの(23) (モーニングコミックス))」山田芳裕作、そして「アルキメデスの大戦(アルキメデスの大戦(6) (ヤンマガKCスペシャル))」三田紀房作のどれもが、現実にあったことを軸に、想像を膨らませている、パラレルワールドものの一種とも言えそうです。

僕の子どもの頃は、原子力を動力としたロボットが地球の危機を救い、クルマは自動運転でなおかつ空を飛んでいるバラ色の未来が描かれていました。しかし、2017年現在ではまだ原子力の安全性が問われ、クルマは相変わらず地上を走っています。予想外に発達したのは携帯電話(スマートフォン)。今後はスマートフォンを入り口にしてAIと繋がり、世界との接点になるのでしょう。
それは、まるでウフコック(「マルドゥック・スクランブル」2003年・冲方丁著に登場するユニバーサル・ウェポン。多次元構造を利用して何にでも変身、変化する。これの元ネタのアイディアが、ヒューゴ・ガーンズバック[Hugo Gernsback]かフレドリック・ブラウン[Fredric Brown]の作品にあったような。思い出せませんが。)のように手の中で何にでもなり得るのです。
でも、せめて自らでコントロール出来るものに変身させましょう。